ヴェリナンは、本来はMMORPG「Arcane Overclock(アーケイン・オーバークロック)」におけるNPCとして設計された存在である。

ゲームの舞台であるネオ・アトラスの下層で活動する“非合法の魔術士”というキャラクター設定を持ち、

初心者やソロプレイヤーの支援/基礎魔術の指導/負傷者の治療や戦闘不能の蘇生/低カルマ値のプレイヤーに対する救済

などの役割を与えられていた。

――ただしそれは記録や証拠によるものではなく、あくまで“そう活動していた”という感覚しでしかない。

思い出そうとすると、NPCとして活動していた頃の断片的な光景や、システムメッセージの残響だけが頭に浮かぶ。

それらがどこまで“実体験”なのか、

あるいは自分は"自身をNPCだと思い込んでいるだけの、別の存在"ではないのか…

その境界は曖昧なままである。

エテメンアンキに現れた経緯も不明で、本人には目覚めの瞬間に関する記憶は無い。

ただ、目覚めた時点で

“自分はNPCで、世界から外れた存在だ”

という強い確信だけは持っていた。

そのためヴェリナンは「自分が何者であるか」という疑問を抱え続けている。